外国人技能実習生受入に関する不正行為
1.外国人技能実習生受入に関する不正行為
事業協同組合を設立し、外国人技能実習生の受入事業を行う場合、「出入国管理および難民認定法」(入管法)や「労働安全衛生法」、「労働基準法」などの労働関連法令など、関わる法律がたくさんあります。
これらに付随する形で制度にはやってはいけない行為が決められていますので、適正な制度活用のため、よく理解をしておく事が必要です。
2.外国人技能実習生受入に関する「不正行為」の具体的な内容
<5年間の停止期間となる場合>
①暴行・脅迫・監禁があった場合
事業協同組合、公益法人等の監理団体、実習実施機関又はあっせん機関において、技能実習生に対して暴行、脅迫又は監禁を行っていた場合です。
最近はさすがにあまり見られなくなりましたが、完全になくなったというわけでもありません。
このような行為があった場合、外国人技能実習生受入は5年間停止となります。
②パスポート、・在留カードの取上げ等
事業協同組合、公益法人等の監理団体、実習実施機関又はあっせん機関において、技能実習生の旅券又は外国人登録証明書を取り上げていた場合です。
例えば、実習実施機関において逃走を防止するため、などと称して旅券や外国人登録証明書を保管していた場合です。
このような行為があった場合、外国人技能実習生受入は5年間停止となります。
③賃金等の不払いがあった場合
事業協同組合、公益法人等の監理団体又は実習実施機関において、技能実習生に対する手当又は報酬の一部又は全部を支払わなかった場合です。
例えば、実習実施機関において、時間外労働や休日出勤を命じながら、労働基準法第37条に規定する割増賃金を支払わなかった場合です。
サービス残業は日本人労働者と同様、認められませんので注意が必要です。
このような行為があった場合、外国人技能実習生受入は5年間停止となります。
④人権を著しく侵害する行為
事業協同組合、公益法人等の監理団体、実習実施機関又はあっせん機関において、技能実習生の人権を著しく侵害する行為を行っていた場合です。
具体例としては、例えば、ヘイトスピーチのような暴言を繰り返し浴びせたり、技能実習生から人権侵害の被害を受けた旨の申告があり、人権擁護機関において人権侵犯の事実が認められた場合や実習実施機関が技能実習生の意に反して預金通帳を取り上げていた場合です。
このような行為があった場合、外国人技能実習生受入は5年間停止となります。
⑤偽変造文書等の行使・提供
事業協同組合、公益法人等の監理団体、実習実施機関又はあっせん機関において、外国人に上陸許可の証印等を受けさせる目的、又は不正行為に関する事実を隠ぺいする目的で、偽造・変造された文書・図面、虚偽の文書・図面を行使又は提供していた場合です。
例えば、常勤職員数の基準に常勤職員数が満たないのに、入国管理局への申請に際し、実習実施機関の常勤職員数を実際より多く偽った内容の書面を作成したり、団体要件省令に規定する「国又は地方公共団体の援助」があることを証する文書を偽造してこれらを地方入国管理局に提出した場合です。
また、監理団体において地方入国管理局に提出する監査報告書に虚偽の記載をした場合、すなわち、実習実施機関で「不正行為」が行われているのを認識していたにもかかわらず、適正に技能実習が実施されているかのような監査報告書を提出した場合や監査を実施していないのにもかかわらず、実施したかのような監査報告書を提出した場合についてもこれに該当します。
このような行為があった場合、外国人技能実習生受入は5年間停止となります。
⑥技能実習生やその家族等から保証金の徴収等
事業協同組合、公益法人等の監理団体、実習実施機関又はあっせん機関が本邦において技能実習生が従事する技能実習に関連して、技能実習生やその家族から、保証金を徴収するなどしてその財産を管理していた場合や労働契約の不履行に係る違約金を定めるなど不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結していた場合です。
例えば、技能実習生の逃走を防止するために、技能実習生やその家族等から保証金を徴収したり、逃走した際の違約金を定めていた場合です。また、地方入国管理局、労働基準監督署等に対して「不正行為」を通報すること、休日に許可を得ずに外出すること、作業時間中にトイレ等で離席すること等を禁じて、その違約金を定める行為や技能実習生やその家族等から商品又はサービスの対価として不当に高額な料金の徴収を予定する契約についても、「不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約」に該当します。
このような行為があった場合、外国人技能実習生受入は5年間停止となります。
<3年間の受入停止になる場合>
⑦雇用契約に基づかない講習の期間中の業務へ従事した場合
事業協同組合、公益法人等の監理団体、実習実施機関又はあっせん機関において、技能実習生を雇用契約に基づかない講習の期間中に業務に従事させていた場合です。
このような行為があった場合、外国人技能実習生受入は3年間停止となります。
⑧二重契約をした場合
事業協同組合、公益法人等の監理団体、実習実施機関又はあっせん機関において、技能実習に係る手当若しくは報酬又は実施時間について技能実習生との間で地方入国管理局への申請内容と異なる内容の取決めをしていた場合です。
例えば、技能実習生の雇用契約については日本人と同等の報酬を支払うことが必要になることから、入管には高めの報酬を記載して提出し、実際は入国管理局への申請の際提出した雇用契約書(写し)に記載された報酬より低い報酬を支払う旨の別の合意を申請後に行った場合です。
このような行為があった場合、外国人技能実習生受入は3年間停止となります。
⑨技能実習計画との齟齬があった場合
事業協同組合、公益法人等の監理団体や実習実施機関において、地方入国管理局への申請の際提出した技能実習計画と著しく異なる内容の技能実習を実施し、又は当該計画に基づく技能実習をしていなかった場合です。
例えば、技能実習生に対し当初の技能実習計画どおりの講習を行わなかった場合や、申請の際に技能実習を行うとした業務とは別の業務に従事させた場合、技能実習計画上の複数の業務項目のうち、大半の項目を実施しなかった場合などです。
また、「技能実習2号ロ」については、技能実習成果の評価において受験し合格した技能実習移行対象職種と異なる職種に従事させていたような場合です。
なお、実際に行われた技能等修得活動の時間数が当初の技能実習計画の時間数を大幅に上回っている場合にも、技能実習計画との齟齬があると判断されることもあります。
このような行為があった場合、外国人技能実習生受入は3年間停止となります。
⑩他の機関への名義貸し
事業協同組合、公益法人等の監理団体、実習実施機関又はあっせん機関において、入国管理局への申請内容と異なる他の機関に技能実習を実施させていた場合や当該他の機関において技能実習を実施していた場合です。
このような行為があった場合、外国人技能実習生受入は3年間停止となります。
⑪実習継続不可能ば場合の報告不履行
事業協同組合、公益法人等の監理団体や実習実施機関において、技能実習の継続が不可能となる事由が生じていながら、地方入国管理局への報告を怠っていた場合です。
例えば、入管からの印象が悪くなることを恐れ、技能実習生が失踪したのにもかかわらず、これを届けることなく、失踪した技能実習生が摘発されるなどして初めて、失踪していたことが地方入国管理局で明らかになった場合です。
このような行為があった場合、外国人技能実習生受入は3年間停止となります。
⑫組合企業に対する監査、相談体制構築等の不履行
事業協同組合、公益法人等の監理団体において、団体要件省令に規定する監査、相談体制構築等の措置を講じていなかった場合です。
このような場合、外国人技能実習生受入は3年間停止となります。
⑬外国人技能実習生の行方不明者の多発
事業協同組合、公益法人等の監理団体や実習実施機関において、上陸基準省令に規定する人数の行方不明を発生させた場合です。
もっとも、監理団体や実習実施機関の責めに帰すべき理由がない場合は、この類型に該当しません。
責めに帰すべき理由がない場合とは、技能実習が技能実習計画に沿って実施され、賃金の支払い等が雇用契約どおりに行われていることなど監理団体や実習実施機関がその責務を果たしている場合です。
⑭不法就労者の雇用等3年間停止
事業協同組合、公益法人等の監理団体、実習実施機関又はあっせん機関において、①事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせる行為、②外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行為又は③業として、①及び②の行為に関しあっせんする行為のいずれかを行い、唆し、又はこれを助けた場合です。
⑮労働関係法令違反3年間停止
事業協同組合、公益法人等の 監理団体や実習実施機関において、【1】、【3】及び【4】に該当しなくても、技能実習の実施に関して、労働基準法、労働安全衛生法、職業安定法等の労働関係法令について重大な違反があり、技能実習の適正な実施を妨げた場合です。
⑯営利目的のあっせん行為
営利を目的とするあっせん機関において、技能実習に関してあっせんを行っていた場合や監理団体若しくは営利を目的としないあっせん機関において、技能実習に関して収益を得てあっせんを行っていた場合です。
例えば、株式会社が技能実習に関する職業紹介を行っていた場合や公益法人が実費を超える手数料を徴収して職業紹介を行っていた場合です。
⑰再度の不正行為に準ずる行為
地方入国管理局から「不正行為に準ずる行為」を行ったものとして指導を受けた監理団体、実習実施機関等において当該指導を受けた後3年以内に再度「不正行為に準ずる行為」を行った場合です。
例えば、監理団体が傘下の実習実施機関の賃金支払いに係る「不正行為」認定の監理責任を問われ「不正行為に準ずる行為」に認定された後、別の傘下の実習実施機関が技能実習計画との齟齬に係る「不正行為」に認定され、再度、監理責任を問われ「不正行為に準ずる行為」に該当する場合です。
<1年間の受入停止>
⑱業務日誌等の作成等不履行
監理団体や実習実施機関において技能実習(本邦外における講習を含む。)の実施状況に係る文書や技能実習の指導に係る文書の作成、備付け又は保存を怠っていた場合です。地方入国管理局の実態調査等の際に当該文書を確認できない場合は、適正に備付け又は保存がなされていることにはならず、この類型に該当します。
なお、技能実習の実施状況に係る文書とは、講習日誌、技能実習日誌、賃金台帳その他の実習内容、指導者、従事時間及び賃金について記載した文書をいい、技能実習の指導に係る文書とは、団体要件省令第1条第8号に定める、監理団体による1月につき1回以上の訪問指導の際に作成する文書をいいます。文書の作成、備付け及び保存は電磁的方法によるものでも差し支えありません。
⑲帰国時の報告不履行
監理団体において、技能実習生の技能実習活動終了後の帰国に係る地方入国管理局への報告を怠っていた場合です。
なお、監理団体が、技能実習活動後に技能実習生が帰国していないことを知りながら、技能実習生が帰国した旨の虚偽の報告を行った場合は⑤に該当します。
3.当事務所のサービス
以上のように、外国人技能実習生受入事業を行う際には、沢山の禁止事項があり、これを守らないと1年~5年の受入ができなくなり、ひどい場合には刑事処分となる場合もあります。
しかしながら、どこまでが大丈夫でどこからは不正行為になるのか等、わかりにくい場合も多くあるのではないでしょうか。
そこで、当事務所では、そのような事業者様のため、外国人技能実習生の受入から運営まで、様々なコンサルティング、書類作成のサポートを行っております。
外国人技能実習生の受入事業でお困りの管理団体様は、お気軽にご相談ください。
<参考費用>
①外国人技能実習生受入サポート:15万円~
②外国人技能実習生受入顧問:月額2万円~
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